デル、オースチン工場(テキサス州)閉鎖に見るEMS戦略
2008-05-27 18:05:13
4月中旬のEMSOne報道でもお伝えしたデルのオースチンにあるデスクトップPC工場閉鎖に関しては、同社の再編がこれだけに留まらず、生産戦略を全面的に見直し、EMS工場への委託生産を大幅活用するとの見方がなされている。デルの中国・香港地区企業宣伝部総監督、張氏は「そのような噂について米本社に確認した結果、正式に発表されたテキサス州オースチンにあるデスクトップPC組み立て工場を閉鎖する計画を除き、現在のところ組み立て工場を閉鎖する計画はない」とし、中国メディアが最も注目しているアモイ工場閉鎖について、現時点でそのような計画はない、と示した。しかし、同社の販売台数はHP、エイサーに抜かれ、現在3位にまで落ち込んでおり、PC業界ではHPやエイサーと比較して高コスト体制といわれている同社が全面的に生産システムの見直しを行っている、と見られている。
ドイツ銀行の調査では、デル立て直しにはオペレーティングコストの削減が重要であるが、さらにより明確な商品ライン、生産モデルの確立が長期に渡る健全な企業運営、コスト削減に必須であるとしている。
ドイツ銀行の試算によれば、デルにとって必要な$3billion(約3,150億円)に上るコスト削減の内、人件費部分はおよそ$750M(787億円)で、パーセンテージにして25%程度である。この人件費分を除く$2.2billion(2,310億円)相当分はデルの開発研究、生産モデルからの削減が必要であり、実行には困難が伴うが、より長期的な低コスト体制には必須の改革である。
デルはこの数年、25%~30%に及ぶ完成品生産の外部委託を進めてきた。同時に自社の生産能力の25%程度を削減してきている。
業界では、デルのオースチン工場閉鎖は、デルの生産モデル改革の第一歩であり、今後更にドラスティックな生産システム改革を行っていくと見られている。また、この改革が成功すればデルの運営コストは大幅な低減が可能となり、PC業界におけるコスト競争で優位に立つことが可能とみている。
デルは現在41万平方メートルの工場敷地を米国に保有(内、約8割が自社保有、残りが賃貸)しており、最近発表されたオースチン工場は米国全体の約10%に相当する。(全世界の約6%)
今後のデルの戦略としては、より大量生産品を中心としたビジネスモデルに集中していくと見られ、この戦略を成功裏に成し遂げるには高コストな生産体制(特に米国、欧州)の見直しが必須である。よって、これから数年間、大量生産品を中心に外部生産の比率が急激に高まっていくと見られている。
以下は米国での生産と中国での生産コストを比較した表である。

上記から見えるのは、PC生産において人件費が占める割合は12%となっており、これに対して中国生産では75%の経費削減が可能ということである。また、材料コストにおいても昨今は中国での生産が増えており、尚かつそれを加工する人件費が中国は安いためこの領域においてのコスト削減も可能である。
特に人件費面でのコスト削減が顕著であるが、一方で海外生産あるいは中国生産というと、とかく【品質問題】が取りざたされる傾向があるが、ノートPC生産の殆どは台湾系EMS企業によって行われており、尚かつその生産地は中国である。HP、エイサーしかりである。台湾系EMS或いはODM企業は、工場幹部に台湾人を配置している企業が殆どであり、我々が見る限り、彼らの管理手法は非常にシビアである。当たり前であるが、伸びているEMS/ODM企業はその管理手法が抜きんでている。このあたりは、EMSOneで紹介している『
CEOインタビュー』も参考にして戴きたい。
現在、EMS企業を選定する際にはその殆どが『口コミベース』で行われているのが殆どである。しかし、一般的に知られている大手EMS企業のFoxconn社やFlextronics社の顧客層は世界トップ500に入る企業であって、これら大手EMSはあくまでも『大量生産』が基本である。生半可な数量ではなく、月数十万台から数百万台単位をこなしている。このため、このような大手EMSにとっては少量多品種製品の生産は殆ど行われない。勿論中堅EMS企業でもその生産量は月数万から数十万を流しているところが一般的であるが、中堅EMSの場合、『少量多品種』を専門に取り扱う部署を擁している企業も少なくない。
ご参考:
EMS/ODM企業情報
EMSとODM
また、外部生産を活用しコストを削減することによって納期面などで顧客を犠牲にしないのか、といった議論もあるだろうが、それらは現在のEMS生産では全くの杞憂である。
【ソース:】EMSOne 【編集者:】Nicky