台湾ODM大手企業:工業PC、車載電子、医療電子の生産へ
2008-05-29 15:01:30
  世界の電子・電気メーカーが2007年に外部委託生産した製品(情報通信設備・消費性電子製品・自動車用電子製品・医療電子及び工業用PCなど)の生産高は2,684億米ドル(IDC調べ)であり、2008年には3,057億ドルに達すると予想されている。この数値はFOXCONN(フォックスコン=鴻海精密)グループの年間売上高の約4.5倍相当である。 受託生産企業は大きく分けて2種類あり、一方は台湾電子産業が得意としている設計業務から生産までを請け負うODM(Original Design Manufacturer)で、もう一方が生産の柔軟性を持ち、世界規模で事業展開を行っているEMS(Electronics Manufacturing Service)である。


台湾系EMS/ODMの世界シェア60%へ

  大手メーカーの受託生産分野において台湾系ODMは順調な業績を残している。既に年間売上高100億ドルを超える企業も数社現れたが、電子設備の受託生産業界全体に占める割合はこの数年、40%前後に留まっており顕著な上昇が見られない。しかし、これにFoxconnのEMS業務を加えると、2008年に台湾系企業が占める受託生産業務は全世界の60%にまで達すると見られ、2004年当時の10数%から大幅に上昇した。

  台湾企業はPC製品の受託生産分野で圧倒的なシェアを占めている。ODM産業における台湾企業の受託生産比率は70%にまで達し、EMS事業を加えると全体の90%が台湾系企業によって生産されている。しかしPC関連製品が電子製品受託生産の総生産高に占める割合は約30%である。また、PC周辺機器である液晶モニターなども台湾系企業による生産が全体の60%以上を占めている。 一方、同じくPC周辺機器であるプリンターについては、フレクストロニクス、ジェイビルサーキット、Venture、Sanmina-SCI等が大きなシェアを占めているが、PC産業全般において台湾企業がODM能力を生かし、その大部分を握っているといえる。

  PC関連から成長した台湾系EMS/ODM企業であるが、この数年は一般消費者向け製品(PS3、Wii、iPhone、デジカメ、液晶テレビなど)の生産比率が劇的に上昇し、多くの台湾系企業が成功を収めた。しかし、PC分野で蓄積したODM能力を生かして新たな領域を開拓しているとは言い難い。

大手EMSも相次いで事業領域を拡大

  EMS領域に限定すると、台湾企業の中ではFoxconnグループが際だった成長を遂げている。その他、やはり台湾系大手のASUSTeKやWistronなどはEMSとODMの両分野を手がけていて、全体的にはODM事業に重点を置いているといえる。一方、欧米系の大手EMS企業は台湾企業の猛追を受けて苦戦しており、台湾系に先駆けて10億ドルの売上を達成していた大手EMS企業(Flextronics、Solectron、Sanmina-SCI)は、Flextronicsを除いて売上高の減少に苦しんでいる。この内、SolectronはFlextronicsに買収・合併され、Sanmina-SCIもPC関連工場をレノボとFoxconnに売却した。

  過去数年の再編を経て、現在新たにグローバル化を推進するEMS企業は少ない。大量生産品の発注は大手EMSに集中する傾向が益々高まってきており、その他の受託生産企業は多品種少量生産を行う中規模EMSサービスを行うか、或いは小規模な顧客に高いレベルのサービスを提供する方向性が強くなってきている。例を挙げると、自動車・医療電子製品分野に数多くの小規模EMS企業が参入している。これら小規模EMSは、メモリやネット関連製品などの競争が激しい分野には参入せず、メーカーと共同で研究・開発を行うなど、より高レベルなサービスを提供することによって自社の競争力を高めている。(EMS企業のトップ5社が産業全体に占めるシェアはメモリ・ネット関連製品では75%、自動車・医療関係では50%程度であり、中堅EMSが入り込める余地が大きい)

車載電子・医療電子・電子計測器・工業用設備分野への新たなEMS/ODM戦略

  台湾企業の多くはODM方式での受託生産を望んでいる企業が多いが、車載電子、医療電子などの分野は一般消費電子と比較にならない複雑な産業構造の上に成り立っている。また、コスト=ブランド競争力という単純な構造とも違っているため、台湾系EMS或いはODM企業が簡単に参入できる領域ではない。しかし、PCや携帯電話がそうであったように、一部のニッチ製品(競合がなく、自社工場をお持ちであれば委託生産に切り替える必要はない)を除いては、製品のコモディティ化が進んでいるため、早晩、これら各メーカーもEMSやODMとの協働を模索する動きが強まってくると考えられる。

クワンタとKontron AGの提携方式を検証

  クワンタ(Quanta=広達)は世界最大のノートPC生産会社である。そのメイン工場は上海の松江に位置している。同社は最近、世界的に有名な工業PCメーカーKontron AG (肯創)との提携を進めており、大規模EMS/ODM企業が工業用PC分野に進出する新たな具体例を示した。Kontron AGは2010年時点で組込型PCの75%の生産をクワンタに委託し、また、両社で新ブランド【Quanmax】事業を推進する。この提携は、両社の強みを生かしたものとなり、Kontron AGはクワンタの生産能力ならびに資金を、クワンタはKontron AGの研究開発システム、品質管理システム及び販売ルートを活用することとなり、小規模EMSとは違ったビジネスモデルを確立する。

  この数年、『量』を追い求めてきたEMS/ODM業界だが、明らかに各社は新たな領域への進出機会を狙っている。それは、工業PC、医療電子、車載電子などの新たな産業分野であり、日系企業が競争力を持つ領域である。日本の技術力と台湾系の物作りが融合していくのは正にこれからである。

【ソース:】EMSOne    【編集者:】Steven