中国・インド・ベトナム・タイ、外資の注目を集めるのは何処か
2008-06-24 15:02:41
中国はこれまで、安価な労働力や政府の外資優遇政策によって海外からの投資を引きつけ、「世界の工場」の王座を守り続けてきた。しかしこの数年、給与レベルが上昇し続け、小規模企業はよりコストの低い内陸部への移転を行い、一方、大企業は何とか運営を続けている状況である。また、中国近隣諸国は虎視眈々と、中国を離れる企業の受け入れ機会を探っている。コスト増による外資の中国離れとベトナム、インドなどの新興国からの挑戦を受けた「世界の工場」は、いつまでその地位を維持できるであろうか。
現時点でも引き続き、中国への進出が海外メーカーの第一の選択肢となっている。2007年に中国へ流れ込んだ海外からの投資金額は830億米ドル近くに達した。しかし、生産コスト高騰に伴って、投資環境の変数も増加した。現在、多国籍企業の多くは、それまでの中国一極集中生産を見直し始め、戦略を「中国+1地域」に修正している。これはつまり中国を狙うと同時に、その他の隣国への進出を計画していることを意味している。その中でも中国と地理的に隣接し条件も良いベトナムが各社の理想的な選択肢となっている。
多国籍企業による戦略変更の理由はコスト面の問題だけではなく、インフレ・労働力不足・エネルギーコスト、人民元の切り上げ、外資税務優遇政策の激減、社会の動乱なども、懸念の対象となっている。当然ながら最も不安な要素は人件費コストで、この1年間で多くの産業の人件費は25%アップし、「世界の工場」としての中国の魅力は色褪せつつある。
キャノンのような大手メーカーは中国での工場建設を中止し、逆にベトナムハノイ工場の従業員数をそれまでの2倍の8,000人に倍増させた。日産自動車は自動車エンジンセンターを、下着大手メーカーのヘインズも現地に2ヵ所の工場を建設し、上海の天虹紡織グループまでもが繊維工場を2ヵ所に設置した。
現在、中国では生産ラインに従事する従業員の給与が1年前から10%上昇し、また、豊富な経験を持つ労働者の給与上昇はこれを遙かに上回っている。現在、週40時間労働のラインスタッフの月給は約120米ドルである。一方、内陸部の給与水準は比較的安価ではあるが、その上昇率は更に急なものとなっており、また、輸送コストを考慮すると決して安価とはいえない。現在の中国の時給は約1米ドルだが、ベトナムで同様の作業を行う場合の月給は、週48時間計算で僅か50米ドルである。
紡績事業を主体としている天虹グループの予測によると、福利費用も計算に入れた場合、2008年度の給与上昇率は16%となり、昨年の12%を上回る見通しだ。 また、最近では人民元の対ドルレートの上昇も顕著なものとなっており、過去1年で10%増加した。 よって、労働コスト上昇は、給与上昇と為替変動のみでこの一年に25%上昇したことになる。さらにインフレ圧力も加わって、状況が今後も悪化するようだと企業努力ではいかんともしがたく、輸出品価格も上昇することが予想される。
労働コスト上昇による圧力の他、中国政府が外資企業に向けて与えている税務優遇政策も取り消されつつある。反対にベトナムは現在、外資企業の企業税を当初の4年間は免除し、その後の4年間は5%(一般企業の半額に相当)の低税率としている。中国が外資企業にとって魅力を失ってきているのも道理である。過去3年間、中国進出した外資企業数は30%増に止まったが、フィリピンに進出した企業は2倍、インドは4倍、そしてベトナムは7倍となっている。
ベトナムは人件費の安さで他を圧倒している他、中国と同様に「一党独裁」の国家体制となっており、ある意味政権は安定しているといえる。しかし中国が他地域と比較して何れも劣っているということは勿論なく、少なくとも中国の交通網は他の競争地域より完備され、更にベトナムと比較して多くの人口を有している。言い換えれば、労働力の供給ではベトナムを圧倒している。ベトナムでは外資進出にともなってインフレが顕著なものとなっており、労働争議も益々活発化し、企業活動への影響が広がりつつあるのも事実である。
今後、更に外資の進出が進むようであれば、必然的に給与上昇は急激に早まることが予想され、先進国の投資家の間では早くも「ベトナムは次の中国、カンボジアは次のベトナム」という言い方が広く伝わっているのもうなずける。

【ソース:】EMSOne 【編集者:】Edward