台湾の大手紙『聯合報』(7月16日付)によると、電気自動車(EV)に使われるリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池用正極材の製造技術が新たに規制されたことについて、台湾の正極材メーカーHCM(泓辰材料)の陳宏力・董事長(会長)は16日、「この禁輸措置は、中国がリン酸リチウムマンガン鉄(LMFP)をレアアース(希土類)と同様に戦略物資とみなしていることを意味する」との見方を示した。その上で陳氏は、HCMがLMFPの実証ライン建設を積極的に進めており、台湾のエネルギー自立政策において同社がより重要な役割を果たしていくと述べた。
聯合報は、世界のリチウムイオン電池用正極材の生産量の80%以上を中国が占める中、世界各国の電池サプライチェーンは国産化や自立を急いでいると指摘。中でも正極材は電池コストの約40%を占め、非常に重要な位置を占めていると評した。
その上で同紙はHCMについて、台湾のシンクタンク工業技術研究院(ITRI)材料化学研究所の技術支援を得て、世界で初めてLMFPの量産化を実現した企業であり、正極材メーカーの中で、設備及び材料の研究・開発(R&D)能力の両方を兼ね備える唯一の企業だと指摘。直近では、仏のエネルギー大手トタル(Total)傘下SaftとITRIの第三期先進電池共同研究開発計画に参加、同計画で最も重要な材料として、HCMのLMFP製品が採用されていると紹介した。
聯合報によると、HCMの陳氏は16日、「海外の電池メーカーがリン酸鉄リチウムやリン酸マンガン鉄リチウムの調達を中国に依存している場合、レアアース同様、輸出規制に直面してサプライチェーンは大きなリスクにさらされることになる」と指摘。その上で自社について、「当社はこれまで米国や欧州のAABC(先進自動車用バッテリー会議)で正極材料を発表してきた。米国エネルギー省からも重要な材料メーカーとして公に推薦されている」と述べた。また、「当社は年産2200トン規模のLMFP実証ラインを建設中で、25年末に竣工、26年には自動化の量産体制が整う。中国以外の希少なサプライチェーンの一員として、当社は国際市場での商機獲得を狙う」と述べた。
【関連情報】
【産業動向】放熱モジュールAVC、中国のレアアース規制「在庫で1カ月半対応可」
【車載】レアアースと車載センサーの重要な関係 中国の輸出規制で浮き彫りに 中国メディア
【産業動向】電池用正極材料の常州鋰源、LGESへの供給10万トン上乗せ
【産業動向】中国のリチウムイオン電池・主要4部材出荷動向 24年上半期 GGII調査
※中国・台湾市場調査ならEMSOneにご用命ください。台湾のシンクタンク、TRI社との共同調査にて、最新の情報をお届けいたします。 先ずはこちらまでご相談ください。
※EMSOneでは日系企業様に向け、コストダウンに向けた各種アウトソーシングサービスの提案を行っています。EMS或いはODMを通じたコストダウンについては こちらをご覧ください。