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【車載】自動車用シート大手3社、関税対応とサプライチェーン再編 優分析レポート
2025-11-05 09:12:37
台湾の経済情報サイト『優分析(UAnalyze)』は2025年11月1日付で、自動車用シートについてのレポートを掲載した。自動車の電動化により車内空間の価値が高まる一方、米国を中心とした関税政策の変動がサプライチェーンの再編を促しているとし、輸送コストが高く地域生産が前提となるシートは、影響が特に大きいと指摘。こうした中、世界3大シートメーカーである 仏FORVIA、米Lear Corporation、トヨタ紡織(Toyota Boshoku) は、最新決算でそれぞれ異なる対応の方針を示したが、各社のコスト吸収力や価格転嫁力の差を浮き彫りにするものになったと評した。


シート産業についてレポートは、付加価値は高いが体積が大きいため輸送コストが高いという特性を持つとし、自然、生産拠点は自動車メーカーの近くに置かざるを得ないと指摘。このためシート各社の関税対応は、地域化戦略と価格転嫁力を測る指標にもなるとした。

うちトヨタ紡織については、最新決算で、米国の追加関税により営業利益が約63億円減少、うち半分以上を自社で吸収したことを明らかにしたと指摘。北米生産チェーンの一部が依然、日本やアジアからの部品輸入に依存しており、越境関税が利益構造を直接圧迫していることが改めて分かったとした。

トヨタ紡織が直面する課題についてUAnalyzeは、「現地生産・現地調達」方針を推進し、米州でサプライチェーン強化を図っているものの、短期的には関税コストを完全に吸収するのが難しい点だと指摘。また、主要顧客であるトヨタ自動車(TOYOTA)との長期的な価格契約により、価格調整のサイクルが長く、関税転嫁力が相対的に弱いことにあるとした。

一方、FORVIA(旧 Faurecia)については、同業の独Hella の統合を通じて「シート」「内装」「燃費効率システム」の三事業体制を構築したと紹介。2025年第3四半期(7〜9月)の投資家向け説明会では、「地域市場の変動は関税により拡大しているが、営業利益への影響は限定的」だとし、理由として、新たに採用した、関税や輸送コストの変動が発生した際、新規受注価格に即時反映できる仕組みである「Dynamic Pricing Alignment」が奏効したことを挙げたとした。さらに、Olivier DURAND最高財務責任者(CFO) が、欧州・北米・中国の三大市場で同社が生産を高度に現地化し、「ナチュラルヘッジ(自然的ヘッジ)」を形成しているとし、同社のコスト構造はほぼ完全にローカル化されており、関税の影響は管理コストの一部として内在化していると説明したと伝えた。これについてUAnalyzeは、FORVIAの戦略は「制度的吸収型」と呼べるもので、分散化した供給体制と契約メカニズムによって、貿易リスクを分散していると指摘した。

さらにLear Corporationについては、世界第2位のシートサプライヤーで、電装システム統合の強みも持つと指摘。25年第3四半期決算で為替・原材料・関税回収(tariff recoveries)を除いた売上高を小幅な減少にとどめたことについて経営陣が、「関税は管理可能なコストであり、通年見通しには影響しない」と強調したと紹介した。また、Jason Cardew CFOが、「当社の価格設計には、関税回収機構が完全に組み込まれており、将来の政策変動による利益率への影響はない」と述べたとし、米国製造の回帰とサプライチェーン再編の流れの中で、Lear がむしろ恩恵を被っており、業界内で最も高いコスト転嫁力を示していると評した。

またLearの強みについては、米国・メキシコ一体型サプライチェーンにあると指摘。輸入依存度が極めて低い他、自動車メーカーとの契約に「四半期ごとの関税回収条項(tariff recovery clause)」を盛り込むことで、関税上昇分を翌四半期の価格に反映できるとした。

レポートは、短期的には関税やコスト変動の影響が残るものの、3社はいずれも中長期的な需要見通しに対して慎重ながらも楽観的な姿勢を示していると指摘。うち、トヨタ紡織について、電動車普及による軽量化・環境対応内装の需要拡大を背景に、米州での「現地開発・現地供給」を加速し、リードタイム短縮と地政学的リスク分散を図るとした。

FORVIAについては、欧州及び中国での電動化率上昇が「スマートコックピット」及び「クリーンモビリティ」技術需要を押し上げる中、同社が水素貯蔵・ゼロエミッション排気システムへの投資を強化し、自動車メーカーとの共同開発を深化すると指摘。同社の経営陣も、車内のデジタル化進展により、1台当たりの車内価値が今後も上昇するとの見方を示していると紹介した。

Learについては、北米市場での電動車・高級シート需要の拡大が中期的な成長につながると同社が判断していると指摘。その上で、同社が自動化及びAI(人工知能)製造技術の導入を進めることで、量産効率と高付加価値の両立を目指すとした。

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