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【産業動向】インドは中国の代わりになれない 『Apple in China』著者が指摘
2026-02-12 12:18:51
台湾の通信社『中央社』(2026年2月9日付)によると、『アップル・イン・チャイナ(Apple in China) 米IT大手はいかにして中国製造の覇権を築いたか』の著者、パトリック・マギー(Patrick McGee)氏は同日、台湾で開かれたシンポジウムで、「『インドで生産されるiPhoneの台数』をもって、サプライチェーン移転の指標とする見方は、最終組立のみを基準にしたもので錯覚を招きやすい」とした上で、「中国を全面的に代替できる国は現時点では存在しない」との見方を示した。


中央社によると、台湾当局系のシンクタンク「科技・民主・社会研究センター」(DSET)と経済誌『商業週刊(Business Weekly)』が主催して台北で開催したシンポジウムには、マギー氏の他、中央研究院院士の朱敬一氏、同院社会学研究所特聘研究員の呉介民氏が登壇。米中対立を背景に、情報通信機器のサプライチェーンが「脱中国」に向かうかどうかが注目される中、中国が製造大国へと成長した背景と、今後のサプライチェーン再編の行方について議論した。

マギー氏は、「iPhoneのインド生産の比率」をもってサプライチェーン移転の進展を測る議論について、「多くは最終組立のみを基準にした数字であり、実態を反映していない」と指摘。コア部品の供給能力や工程設計、エンジニアリング力は依然として中国に対する依存が極めて高いとし、「『次の中国』は存在しない」と断言した。

マギー氏はまた、アップルが中国に製造拠点を置いたのは、当初から中国の技術力を評価していたためではなく、1990年代後半〜2000年代初頭にかけて経営危機に直面し、自社で生産ラインを構築する余力を失っていたという事情があったと指摘。結果として、グローバルな製造アウトソーシングに活路を見いだし、中国の持つ「規模の力」に賭けたものだとし、中国の工場は当初、品質面で課題を抱えていたが、アップルは大量の人員と資金を投入することで、工程管理や技術教育にまで踏み込んだとした。

同氏は、アップルが結果的に、中国製造業の能力向上により、「国家建設」に近い役割を果たしたと分析。2008年以降、アップルのサプライチェーンで訓練を受けた労働者は累計で約3000万人に達した他、10年以上前の時点で中国への年間投資額が550億米ドルに上る等、同社の動きは、中国の製造能力が飛躍する重要な原動力になったとの見方を示した。

一方、AI(人工知能)等の新産業の台頭が、アップルサプライチェーンの「脱中国」を可能にするかとの問いに対しマギー氏は、改めて「次の中国は存在しない」と強調。仮にアップルがインドへの移管を加速したとしても、中国政府や中国消費者からの反発に直面する他、例えば「工場が突然停電する」といった、急所を攻める手段が多数、中国側にはあるとの考えを示した。

さらに同氏は、中国の工場は極めて高い動員力を備えており、深夜でも数百人を即座に集めて技術的課題を解決できるが、こうした効率性はインドやベトナムでは再現が難しいと述べた。

社会学研究所特聘研究員の呉介民氏は、「アップルの成功は単一企業の戦略によるものではなく、中国国内の豊富な労働力、グローバルブランドが製造リスクを供給網の末端に移転してきた慣行、そして台湾の製造業者が中国と世界市場をつなぐ調整役として果たしてきた役割が重なった結果だ」と指摘。「この歴史を直視することが、台湾の将来戦略を考える上で不可欠だ」との認識を示した。

今後のサプライチェーン動向について、中央研究院院士の朱敬一氏は、制度や価値観を共有する国々の間で形成される産業連携が重要になると指摘。米国が同盟国に対して不確実な姿勢を取り続ければ、供給網の再編は中国に有利な形で進む可能性があるとの見方を示した。

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