【台湾】EMS/ODMの低コスト生産、自社開発とリサイクル技術の推進が成長の柱
日時: 2008/08/15
編集: EMSOne    
世界的な原料高によって、EMS/ODM企業のコスト圧力は日増しに高まっている。しかし、EMS/ODM企業はこれまでも、絶えず競合他社とのコスト競争を進めてきており、現在のような経済環境下においてもより効率的な生産を達成するために日々改善を繰り返している。その改善範囲は膨大なものに及ぶが、各社の動向を追ってみた。
EMS世界最大手の『Foxconn』は、自社で携帯電話やノートPC用部品を製造するだけでなく、常に生産技術と製造プロセスの最適化への研究開発を続けていることでよく知られている。また、これまで廃棄物として処理してきたものを再利用するというリサイクル技術の推進も当然のように進めている。

Foxconnは低コスト生産で世界の電子業界をリードしているといえるだろう。中国の低賃金と人的資源を最大限に利用することで世界最大のEMS企業となったが、現在の賃金高騰や労働者不足を数年前から予見し、生産拠点を内陸部に移転、あるいは大量のロボット導入による人件費の最小化などに他社に先駆けて取り組んできた。更にこうした新たな技術導入にあたっても、殆どが自社開発によって目標の達成を遂げている。

一般的に、EMS/ODM企業は部品を他社から購入し、大量購買+大量生産によってコストメリットを追求していると考えられるが、競争が激化した現在では部品の自社開発によるコスト低減も見逃すことは出来ない。

これまでも大手企業では、ケースやコネクター、機構部品などは自社で開発・製造する企業が殆どであったが、現在はノートPC用カメラモジュールなどの電子部品にもその開発が及んでいる。既にクアンタやASUSTekなどがカメラモジュールの開発を進めているとされ、こうした重要部品を自社内に取り込むことによって、更なるコスト低減を目指している。

【第一経済日報】によると、中国のカメラモジュール生産大手SuperPix(北京視信源)の董事長兼CTOの陳傑氏は、「ノートPCにカメラモジュールを搭載することは既に現在のトレンドとなっており、クアンタやASUSTekなどのノートPC受託生産企業各社が開発を進めている」と指摘した。こうした流れはカメラモジュールメーカーにとって近い内に脅威となるだろう。クアンタやASUSTekによるモジュール供給量は未だ大手専業メーカーに及ばないが、技術力の向上と生産能力の拡大が進むにつれて、カメラモジュール専業メーカーの利益獲得に多大な影響を与えると予想される。

ノートPC生産企業のある幹部は、「モバイルインターネットの波が押し寄せるに伴って、ノートPCはテレビ電話の主要ツールとなってきている。低価格ノートPC市場が大きくなるに従ってカメラモジュール需要も大幅に増えるだろう。クアンタなどがカメラモジュール開発をゼロから始めるのであれば難しいが、既にある一定レベルの技術力を持っているとすれば、利益率の向上に大いに役立つだろう」と指摘した。

実際、この原材料高騰の中、クアンタなどの利益率は逆に上向いている。同社の利益率は3四半期連続で上昇しており、昨年第3四半期の4.7%から今年第1四半期には5.2%まで成長した。同社副董事長の梁次震副董事長は、「第2四半期及び第3四半期の利益率は更に上昇する可能性がある」とメディアに語っている。また、同じくコンパルの予想も第2四半期の利益率を第1四半期と同等或いは小幅上昇と見ている。

現在の原材料高、労働コスト高は中国製造だけの問題でなく全世界的な問題であるが、中国で生産を行っている台湾系受託生産企業は、研究開発とリサイクル技術の推進を図ることによってコスト力を強化しようとしている。

Foxconn の内部情報によると、同社は新技術をいち早く取り入れることによって、持続的なコスト低減に成功している。例えば、銅、アルミなどの非鉄金属は数年前から上昇を続けているが、Foxconn ではメッキ技術の刷新を図ることによってコスト低減を推進した。以前は溶接にあたってより幅広い面積に薬剤の塗布を行っていたが、同社では溶接面だけに塗布する技術を開発し、更に完全な自動化ラインを取り入れることによって、電気メッキのコストは80%~85%引き下げられたという。

その他、Foxconnの太原工場ではマグネシウム合金や精密鋳造、ヒートシンク、LED照明などの生産をおこなっているが、ここでも不良品や廃材を再度溶解、精錬することによって再利用を進めている。同社関係者は、「60%以上のマグネシウム合金がリサイクルによって自社内で利用され、大幅なコスト低減に繋がった」と語った。

MP3、携帯電話は言うに及ばず、ノートPCや液晶テレビなども完全にコモディティ化しつつあるなか、それぞれの単価は下落する一方である。こうした流れを作ったのはEMS企業による大量生産であるが、それによって膨大な製品需要を作り出したのも事実である。最近の話題をさらった『iPhone』は全世界で同時発売を行ったが、そうした販売方法もEMS企業による大量生産があって初めて可能となったものだ。トレンド製品が一夜にして全世界に広がる現代において、今後もEMSやODM企業は益々その存在感を知らしめることになるだろう。
1