基板のはんだに浸漬される側のパッドの面積を大きくし、噴流槽からより多くの熱エネルギがスルホールに伝達されるようにすることなど。

上に述べた項目のうち最初の三つの項目は装置設計にも関係があります。このように、はんだ材料の融点が上昇したということをとっても、慎重にしかも、理論的に検討し、対策を講じて、装置設計に反映していく必要があります。このようなことは、随所にあります。従って、はんだ材料が変更されると、装置設計に様々な工夫と変更が必要となります。
b)基板へのはんだ供給量が多くなる。

はんだの温度を充分確保しないと、流動性が低下すると述べましたが、流動性が低下すると基板へのはんだの付着量も多くなり、はんだの切れも悪くなります。また、このことから、はんだブリッジなどの問題も発生しやすくなります。
従って、フローはんだ付け装置の心臓部である噴流槽のノズル設計もSnPbはんだ用のものとは異なったものが必要になります。


図2に従来の噴流槽の構造を示します。SnPbはんだは表面張力が小さくはんだブリ ッジが発生しやすいため、基板の搬送方向と逆向きにはんだの流れを作り、このはんだの流れによって、基板に供給するはんだの量を制御し、はんだブリッジを防止してきました。鉛フリーはんだでは、表面張力は大きく、材料的にははんだブリッジが発生しにくいものです。従って、はんだの流れではなく、材料の表面張力を最大限に発揮させるノズル構造が要求され、異なった噴流槽の構造が必要となります。

2.はんだが酸化しやすく、濡れ性も低下する。
a)ドロスの発生が多くなる。
 ドロスとははんだ槽の表面に浮いているはんだの酸化物のことです。鉛フリーはんだを使用すると、上述したようにはんだの温度も高く設定しなければならず、しかも酸化しやすいことから、どうしてもこのドロスの発生が多くなるのです。ドロスの発生が多くなると、はんだ噴流ポンプに吸込まれ、はんだ噴流の中に混じって、はんだ接合部に供給されてしまう危険性も大きくなります。従って、このようなドロスの発生を防止することも装置設計上の大きなポイントの一つになります。

b)はんだの濡れ性が低下する。 鉛フリーはんだでは、SnPbはんだと比較し、はんだそのものの濡れ性ははんだが酸化しやすい分低下します。はんだの濡れ性は、信頼性のあるはんだ接合部を形成するのに、非常に重要な要素です。はんだの濡れ性を確保するには、フラックスの改良開発が必要です。では、装置設計には関係がないのかというと、そうではありません。濡れを確保するには、フラックスをはんだ付けする部分に充分供給する必要があります。鉛フリーはんだを使用する、フローはんだ付け装置では、従来のスプレー方式ではなく、もっと多くのフラックスを供給しうる構造が要求されます。

3.冷却の能力の向上も忘れずに。
このはんだ付け技術講座を第一回からお読みの読者はすでにお気づきのことだと思います。そうです、鉛フリーはんだ合金はSnPbはんだと比較して組織依存性の強い合金です。このため、合金の機械的特性を充分発揮させるには、金属組織をできるだけ微細化する必要があります。金属組織を微細化するには、冷却を強化することが重要です。

<現在市販されているフローはんだ付け装置では様々な問題が解決できない。>
上述した内容は、はんだ材料から見たフローはんだ付け装置に対する要求事項のほんの一部分です。どうですか、現在市場で販売されている装置の多くが、ここで述べた要求事項を満足していますか?ドロスが多く発生する。スルホールへのはんだ上がりが悪い。はんだの切れがもう一つ、はんだブリッジも多い。はんだ接合部がどうしても盛り上がったようになる。これらは、すべて鉛フリーはんだに変更したため、発生しており、鉛フリーはんだの特徴であり、解決できない問題だ。このように考えて諦めていませんか?いいえ、そんなことはありません。これらの問題はすべて材料と装置のミスマッチィングから発生しているのです。材料が変われば、当然装置も変わらなければなりません。この当たり前のことができていないのです。「材料特性を生かした装置設計」、これが、装置を選定するポイントです。



 
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