従来のSnPb半田に近い、変形しやすいが破断に至る変形能が大きいという特徴を持たせるには、溶融SAC半田を急冷し、Snのデンドライトの成長を抑え、できる限り結晶の大きさを小さくし、次の共晶組織をすばやく析出させる必要があります。このようにすると、Snの結晶と共晶組織が細かく混ざり合った金属組織となり、変形を阻止する共晶組織が分散されることから、変形阻止能力が低下し、変形しやすく、破断までの変形能の大きな構造が実現しうることになります。従来のSnPb半田でも、結晶の微細化が推奨されていましたが、SAC半田では結晶の微細化はさらに大きな意味を持っています。このことを、充分認識して、フロー半田付け槽さらにはリフロー炉の冷却特性の向上を図る必要があると思います。
<半田付け後の外観検査基準が変わる。>
SAC半田では、2段階で凝固することを説明しました。この凝固メカニズムが半田付け後の外観を金属光沢のないものするのです。従来のSnPb半田では、長年に渡り、半田付け後の外観検査が重要視されてきました。しかし、SAC半田では、この2段階による凝固のため、基本的には光沢の少ない凝固表面になってしまうのです。この原因が凝固時に発生する「引け巣」という現象です。そのメカニズムについて考えてみましょう。

溶融SAC半田は前述したように、最初にSnのデンドライトが析出し、次に共晶組織が析出します。このように2段階で析出するため、2段階目の共晶組織が析出する際、凝固収縮により、すでに析出しているSn結晶よりも凝固面が下がります。この現象を「引け巣」と呼んでいるのです。

図2にこのイメージ図を示します。
図1 SAC半田の凝固イメージ
この結果、凝固後の半田の表面は、図2に示すように最初に析出したSn結晶の面と2番目に析出した共晶組織の面が一致せず、凸凹した状態になります。表面が凸凹状態になると、光を乱反射することから、半田付け後の外観としては、金属光沢の少ないものとなります。もちろん、急速に冷却すれば、引け巣の大きさは深さ、幅とも小さくなり、金属光沢も改善されます。このように、引け巣はSAC半田を使用する限り、基本的なものであることから、これを前提とした外観検査基準を確立する必要があります。半田の外観は凝固メカニズムによって決定され、材料が鉛入りから鉛レスに変化し、その凝固特性が異なれば、当然、外観も異なったものとなります。

<評価試験も慎重に>
このように、SAC半田は、金属組織においても、凝固特性においても従来のSnPb半田とは大変異なった特性を持っています。従って、信頼性試験などのように評価試験を行う場合には、SnPb半田に対して行っていたのと同様の試験を機械的に行うのではなく(比較の意味で実施するのは良いと思います)、ここで述べたようなSAC半田の特徴をよく理解し、その材料に合った評価試験計画を立案する必要があります。そうしなければ、思わぬ誤解を生むことになると思います。
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