<リフロー炉の基本加熱構造と問題点>



図3にリフロー炉の加熱ユニットの基本加熱構造を示します。リフロー炉では、上述した衝突噴流用の噴出し口を図3に示すように、複数個配置し、基板を加熱します。基板加熱後の温度の下がった熱風は、ファン&加熱ユニットで回収され、適切な温度まで加熱した後、高圧高温の空気に変換して圧力室に送り込まれます。圧力室に溜められた高温高圧の空気は、噴出し口で噴出し速度を持った熱風に変換され、基板を加熱します。これが、理想的な加熱システムです。このような加熱システムでは、基板は均一に加熱されます。それは、圧力室を持っており、しかも圧力室内を常に均一な圧力になるように制御しているからです。この圧力室内の圧力にバラツキがあると、噴出し口から噴出される熱風の噴出し速度にバラツキが発生し、基板に加熱ムラを発生させてしまうのです。実際、多くの市販されているリフロー炉で、加熱能力が足りない、基板の加熱に均一性がないなどの問題はすべてこのファン&加熱ユニットと圧力室の基本設計に問題があるといえます。筆者はこれまで数多くのリフロー炉を見てきましたが、筆者が感じた主な問題点を挙げると次のようになります。

  · ファンの能力以上の噴出し口を設けたため、圧力室内の圧力が低下し、加熱ユニットの真ん中と端部で熱風の噴出し速度が異なっている。
  ·熱風の噴出し口と基板との距離が長すぎるため、途中で乱流になってしまい、加熱能力が低下してしまっている。それにも係らず、「均一でやさしい加熱」と訳の判らない宣伝文句が並べられている。
  ·熱風の噴出し速度、噴出し口と基板との距離、噴出し口の大きさには最適値が存在するのに、やたらに変更できる設計になっている。むしろ、変更できることを大きな特長としてしている。設計することを放棄し、すべてをユーザに任せている。
  ·圧力室の圧力が均一になっていないため、圧力室にやたらと邪魔板を取り付け、むやみに複雑な構造にしている。 など 流体力学の理論に基づき、しっかりファン&加熱ユニットを設計すれば、このような問題はなくなり、シンプルで均一性の良好な加熱ユニットができると思います。

<リフロー炉で窒素は有効か>

市販されている多くのリフロー炉の中には、窒素を炉内に流し、炉内の酸素濃度を下げるようにしたものがあります。果たして、窒素は有効なのでしょうか?この疑問について考えて見ましょう。






炉内に多くの酸素が存在すると、図4に示すように、炉内で加熱された酸素がペーストはんだを攻撃します。ペーストはんだのベース剤であるロジンは酸化されやすく、ロジンが酸化されると、ペーストはんだ中のはんだ粉末さらには、部品のリードもしくは基板のパッドが酸化されてしまいます。もちろん、ペーストはんだ中にはこれらの酸化を還元する活性剤が含まれているため、酸化されたはんだ粉末などはこの活性剤により還元されます。
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