このように、炉内に数多くの高温の酸素が存在すると、酸素による酸化と活性剤による還元が同時に進行し、結果的にはペーストはんだ中の活性剤が浪費され しまうと、本来の目的を達成することができず、濡れ不良には至りませんが、濡れ不良の前段階である、はんだボール(ペーストはんだ中のはんだ粉末の酸化が原因)がチップ部品の横に発生することになります。もちろん、活性剤が多く含まれたペーストはんだを使用すれば、この問題は容易に解決することができますが、はんだ合金中の鉛が規制されたように、次の環境規制対象はフラックス中のハロゲン活性剤だといわれています。また、活性剤を多く使用すると、活性剤が分解するときに発生するガスも多くなり、このガスが、はんだ接合部中に閉じ込められると、ボイドになることから、ボイド発生の危険性も大きくなります。このような状況を考えますと、やはり、窒素を使用し、炉内の酸素濃度を下げるということは、有効な対策であると考えられます。では、どの程度、酸素濃度を下げると効果が大きいかというと、色々な実験結果と筆者の経験から、500ppm以下にすると効果は高いと思います。




<炉内はなぜ汚れるのか>

炉内に付着している、汚れの成分には大きく分けて二種類のものが存在します。一つは黒く、油状の物質で、もう一つはちょっと黄色味掛かった粉末状の物質です。これらのものを分析した結果わかったことは、油状の物質はフラックスのベース剤として使用されているロジン(松脂)の低沸化物(100℃前後の低温で蒸発する成分)でした。本来、ロジンはリフローはんだ付けでは、蒸発せずフラックス残渣としてはんだ接合部に残留するものです。このロジンの低沸化物は、ロジン中に含まれる不純物のようなものだと思われます。このようなロジン中の低沸化物はフラックスが低沸化物の沸点以上に加熱されると炉内で蒸発し、この蒸気が炉内の温度の低い場所で冷却され、固まったものです。もう一方の粉末状の物質は、フラックス中に含まれる活性剤でした。活性剤は活性化温度に加熱されて、初めて活性剤としての役割を果たすものです。この活性化温度は活性剤の分解温度に近く、活性剤は分解直前に、被はんだ付け面から酸化物を除去するという活性剤としての役割を行い、その後分解ガスとなって炉内で、ロジンの低沸化物同様、蒸発します。この蒸発したガスが炉内の比較的温度の低い場所で冷却され、固まったものです。従って、このような汚れ成分が付着するのは、炉内でも温度の低い場所に限られます。このように、炉内の汚れは、フラックス中に含まれる基本成分が原因です。このような汚れの成分を回収する装置が取り付けられているリフロー炉もありますが、多くは蒸発した汚れ成分を捕集し、冷却して回収するという方法を採用しています。しかし、このような方法では充分な捕集効果が得られず、汚れ防止にはなっていないのが現状です。ここでも、さらに良い方法が望まれています。

<冷却能力の向上も忘れずに>

最後に、鉛フリーはんだの場合、何度もお話している通り、その機械的特性は組織依存性を持っています。従って、リフロー炉でもSnPbはんだの時よりも、冷却能力を高め、出来るだけ急冷になるようにする必要があります。

リフロー炉に関して、紙面の都合上、主な問題点だけを取り上げて話をしてきました。いずれにしても、リフロー炉ですから加熱構造が最も重要であることには、間違いありません。ここで述べたことを参考にして、是非、良いものを見分ける力を養って頂ければ幸いです。





 
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